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やっぱり俺は馬鹿なんだと思う。

13−2 告白再び

「迷惑なんて思ってない。紫子は全然、迷惑なんかじゃない。紫子は、俺が無理してつきあってたと思ったんだろ? 命令されたからだって。だから、あんなふうに言った。別れようとした。そうなんだろう? 
 でも、違うんだ。そんなふうに思わせたのは謝る。それに、最初、嘘ついてたことも全部。でも、途中からは本気だったんだ。迷惑だなんて全然、思ってない。あの二人のことなんか全然、関係ない」
 篠田さんの瞳が揺れた。唇がかすかに動いた。
「全部、謝る」
 頭を下げた。それから、まっすぐ見つめた。喉が痛い。こんなに声を出すのが苦しいなんて初めてだ。
「あらためて、お願いします。俺と、つきあって下さい」
 紫子の頭が左右に揺れた。
「今度こそ、本気で言う。紫子と一緒にいたい。好きだから、別れたくない。だから、もし、俺を許してくれるなら、まだ嫌いじゃなかったら、俺と一緒にいて下さい」
 声が震えた。答えの自信は一つもない。篠田さんの誤解を解きたかった。それは彼女を苦しめることだったから、許してもらえなくても、それだけはわかってほしかった。悪いのは俺で、篠田さんじゃない。座り直し、じっと答えを待った。篠田さんの顔に怯えのようなものがある。
「本当……に?」
「本当だよ。全部、本当だよ。信じて」
 勢い込んで言ってから、騙していた男が言えるような言葉じゃないことに気づいたけど、必死だった。
「今、言ったことは全部、本当なんだ。今さらだけど、でも、紫子と別れたくないんだ。だから」
 篠田さんが顔を両手で覆って俯いた。肩が震えている。俺は篠田さんの隣に移ったが、触れていいものか迷ったあげく、肩を抱いた。
「ごめん。勝手言って。紫子がしたいように、するよ。俺の気持ちのことなんか、考えなくていい」
 こうして肩を抱くのは最後なんだろうと思うと、自業自得なのに苦しかった。髪からはあの時と同じ香りがした。このままこうしていたかった。篠田さんの手が涙を拭った。そして、俺を見た。
「信じる。だから、一緒に、」
 言い終わるのが待てずに抱き締めた。人目があることもすっかり忘れてた。胸がつまって、ありがとう、としか言えなかった。

 店を出ると、もうすっかり遅くなっていた。篠田さんを家まで送って泊った。最初の夜は激情にかられてしまったけど、その夜は一瞬一瞬が惜しくて、愛しくて、宝物のように思えた。また、この部屋に戻れた幸せに浸った。


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