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やっぱり俺は馬鹿なんだと思う。

13−1 告白再び

 篠田さんから別れを宣告されてもう1週間。今日は金曜日だ。先週までは一番、心が浮き立ってた曜日だ。1週間、もがいているうちに、俺はやっぱり、全部話すことを決めた。言い訳になるのはわかってるけど、篠田さんの誤解を解かなければならないことに気づいたからだ。
 篠田さんは俺じゃなく、自分に非があると思っている。

 店に入ると、篠田さんは先週と同じ席に座っていた。また、そこ以外は埋まっていて、よほど俺たちはここに縁があるらしい。きっと一生忘れない場所だ。
 注文をとったウェートレスが行ってしまうと、篠田さんは俯いてしまった。俺の顔も見たくないんだろうか。でも、言わなければならない。
「ありがとう、来てくれて。どうしても話したいことがあったんだ」
 話そうとしたら、コーヒーが来た。篠田さんが何も入れずに口をつけた。いつもなら砂糖を入れるのに。声が震えそうになる。
「橋川さんたちの話、聞いたって言ってたけど、ちゃんと話すよ。多分、誤解してるから。俺さ、橋川さんに、紫子を落としてみろって言われたんだ。紫子は誰ともつきあってないはずだからできるはずだって……橋川さんが怖くて、断れなかった。つきあってもらえるとは思わなかったし、だから、断ってくれたら睨まれずにすむって思った」
 一気に話して、一口飲んだ。篠田さんは顔を上げなかった。
「だから、つきあうって言われて、正直、焦ったんだ。とにかく、なんとかしなきゃって思った。橋川さんにもせっつかれて」
 俯いている篠田さんをじっと見つめた。自分で言いながら、その時の気持ちを思い出していた。篠田さんはこんな俺を好きになってくれたのに、幻滅してるんだろうな、きっと。嘘は言わないとあらためて思った。本当の気持ちだけを言う。
「でも、変わったんだ。すぐに、橋川さんとか鳥羽とかは関係なくて、紫子と一緒にいるのがすごく楽しかった。好きになってた。毎週、どこに行こうかって考えて、紫子が喜んでるのを見られるのが嬉しくて。だから、けじめをつける意味で鳥羽に『もう橋川さんとのことは関係なく続けることにした』って言ったんだ。それで、そっちは終わったと思い込んでた。
 橋川さんたちが言ってたことってこのことだろ? おととい、そのこと、からかわれたんだ。だから、紫子が言った意味がわかった」
 篠田さんが緊張したのがわかった。立ち上がりそうになったのを先んじて言った。
「待ってくれ。この前、『迷惑をかけられない』って言ったよね?」
 篠田さんと目が合った。悲痛な表情っていうのはああいう顔を言うんだ。でも、言わなきゃいけない。そんな顔する必要ないんだから。
「あの時、紫子にばれたと思って、そのことでいっぱいだったけど、橋川さんと話してて、おかしいって気がついた。迷惑をかけたのは俺の方なんだ。なのに、紫子は逆のことを言ってた」
 俺は身を乗り出した。


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