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やっぱり俺は馬鹿なんだと思う。

10 混乱

 直接話したいという篠田さんに呼ばれて、最初の店に来ていた。金曜の夜で待ち合わせが多いせいか、空いてるのは最初の時の席だけで、ほんの3か月くらい前のことなのに懐かしかった。向かいに座った篠田さんの顔色が少し悪いような気がした。確かに今週はお互い仕事がきつかった。でも、明日、明後日、篠田さんと一緒に過ごせると思うと、疲れがとれる。
「話って明日の休みのこと? あのさ、明日は出かけないで、一緒に家でのんびりしたらどうかな」
 篠田さんが微笑んだ。静かな声だった。
「もう、いいんです。これ以上、長谷部さんに迷惑をかけられません。私とのこと、忘れて下さい」
 絶句した。今、なんて言った? 篠田さんがお辞儀をして、立っていこうとしてる。
「なんで? 俺、なんかした? 忘れて、って俺と別れるってこと?」
 焦って腕をつかんで、座らせると、篠田さんの横にしゃがんで顔を覗きこんだ。苦しそうな顔をしていた。
「紫子、なんで? 言ってくれよ。言わなきゃわかんないよ。俺のこと……嫌いになった?」
 本当にわからなかった。混乱していた。抱き合って眠ったのは先々週のことなのに、ほんの2週間の間に俺は何か間違ったのか。嫌われるようなことしたのか。何が起こった?
 篠田さんが目を合わせずに、ぽつりと言った。
「火曜日、橋川さんたちが話してるのを、聞いたの」
 ゆっくり篠田さんが立って、店を出ていった。俺は動けなかった。


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