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びっくり箱〜顛末は記憶の彼方

4 開いたびっくり箱

「あのあと、居酒屋で優里は俺に爆弾を投げてきたんだ。俺が好きなんだって」
 目が点になった。成瀬さんの顔を見つめたまま、固まった。よりによって何言ってるのよ、私は。その場にいたら頭から水ぶっかけてやりたい。
「彼女がいるのは知ってるけど、思ってるのだけでも許して下さい。そう宣言して、返事も聞かずに瞬時に爆睡した」
 だめだ、だめすぎる。成瀬さんが喉の奥で笑ってる。
「なんとなくそんな気はしてたんだけど、いやあ、びっくりした。それで、さっきのところに連れてった。優里のアパートは知らないし、俺のところは昨日は使えなくなってたんだ、その時には。
 寝かせようとしたら、優里が起きて謝り始めて、出ていこうとした。出すわけないだろ? まだふらふらでまともに歩けてないのにさ。で、確保して」
「いいです! もういいです! あとはわかります。わかりました。ごめんなさい、ごめんなさい!」
 穴があったら入りたいって、このことだ。今すぐ逃げたい。もう成瀬さんに顔見せらんない。最悪。私の約半年の淡い片思いもこれで終わりだ。明後日からどんな顔して会社に行けって言うの。
 立ち上がろうとした私の肩を成瀬さんの手が押さえた。
「まだ終わってない。最後までちゃんと聞け。まったく、前に仕事で注意しただろ」
 押さえた手がそのまま私の肩を引き寄せて、私は動けなくなった。成瀬さんが声を潜めた。
「……成瀬さん?」
「何がわかってるんだ? わかってるなら、そのあとどうなったか、次から選べ。1番、優里が俺を押し倒した。2番、俺が優里を押し倒した。3番、何もしてない。さあ、どれだ?」
 そんなわけない。成瀬さんからなんてこと、あるわけない。だって彼女いるんだから。それなのに2番だったら嫌だ。3番は、論外。
「1番」
 間があった。成瀬さんが俯いて笑いをこらえてる。何で?
「馬鹿。優里が俺をどうこうできるわけ、ないだろ? 今だって、たったこれだけで動けないのに」
「で、でもっ、今は今で、その時は酔っぱらいだし、火事場の」
「きれいに忘れてるんだなあ、見事なもんだ」
 私の言葉を遮って、感心したみたいに成瀬さんが言った。そのまま、ほんの一口残ってたコーヒーを飲んだ。なんでこの人、こんなに余裕なの? もう混乱しまくって、どうしていいかわからない私の顔を覗き込んできた。
「正解は4番。つきあうのはやぶさかでないので、とりあえず試してみてから答えると俺が言った、だ。で、さっき、答えは言った、覚えてるか?」
 耳を疑った。でも、この目、仕事の時みたいな、真剣なのに、どこか楽しんでるみたいな目。
「答えって……え? え、えっと」
 いろんなこと言われて、どのことなのかわからない。苦笑しながら、成瀬さんがゆっくり言った。
 


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